2011.05.30 Monday
写 長編小説 「昭和」番外編 信念 その20
始子の朝は 新聞が届くときより 始まります。 新聞の配達の 郵便受けが ガチャと言う音で お布団を出ます。 身支度をして 布団をたたみ 新聞を取りに外に出ます。 新聞を お膳と呼んでいる 小さなちゃぶ台に置いて 朝ご飯の支度を始めます。 ご飯は 鍋でガスで炊きます。 炊飯器は使いません。 ご飯を炊いている間 味噌汁の用意をします。 ご飯が炊きあがるまでの時間 台所を離れません。 ガスをつけっぱなしにして 離れたら 危ないからです。 ガスの火を見ながら 十数分 お味噌汁と ご飯が出来上がります。 お鍋から ご飯を おひつにうつし その中から お仏飯を最初にいれて ご仏壇に供えます。 手を合わして 念仏を あげます。 お灯明や お線香は ご住職様が 月参りに来られる時にしか あげません。 平素は お仏飯と お念仏だけです。 それから お茶碗にご飯をよそって 味噌汁を入れ お膳にお湯と一緒に 運びます。 始子の 朝は早いけど ゆっくりの朝ご飯が始まります。 始子は 夫からいつも言われていたことのひとつである 「ゆっくり食べる」 「32回噛んでから飲み込む」を いつも実行していたのです。 |